続き、
前回書いたとおり、この石垣の作り方には驚かされた。
ぱっと見たとき、大体のものは何となくだが作り方の想像が付くのだが、
これはどうやったのかすぐに答えが出せなかった。
横組みでやっていることは判るのだが、
どの面も綺麗に1プレート厚(部分的に2プレート厚)で
末広がりの段差を作るにはどうしたらいいのか?
簡単そうな問題だが、判りそうで判らなかった。
〈写真@〉

〈写真A〉

〈写真B〉

〈写真C〉

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筆者は作者の柳氏にお会いしたことがないのだが、SNS上では付き合いがある。
どう作ったか正確な答えを訊くこともやれば出来るのだろうが、
それをやってしまうと意味がない。
基本、技は盗むものである。
以下に提示するのは、私なりに作り方を考えた結果である。
おそらくこういう考え方でやったのだろう。
ひとまず、五段で作ってみた。
その結果が〈図@〉である。
便宜上、これを『基本の石垣』と呼ぶ。
〈図@〉

作り方は、
手順1.
立てたときに急激に反り上がるような曲面が出来るよう、
ブロックとプレートを積分する。それを立てたものが〈図A〉である。
〈図A〉

手順2.
先の面に濃灰またはタンの1x1タイルをランダムに貼り付けて、一面完成。
続いて、側面ポッチ部分にプレートを貼り付け…
〈図B〉

手順3.
ブロックやプレートを積み、曲面の土台を作る。
この時、先に完成した面と傾きが同じになるよう調整しながら積む。
手順2同様、1x1タイルを適当に敷き詰めたら、二面目完成。
〈図C〉

手順4.
1x4側面ポッチ付ブロックを任意の位置に貼り付け、
天守閣等建物部分の土台を貼り付ける。これで基本の石垣が一つ完成する。
〈図D〉

仮に、基本の石垣を二つつなげると以下のような状態になる(図E参照)。
図は上から、表面、俯瞰で見た状態、裏側の状態を表す。
〈図E〉

翻って、実際の作品。
石垣の面同士が交差することで出来る谷の部分を比べると、
見てくれは同じになったように思う。
〈写真D〉

〈写真E〉

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基本の石垣が完成したからと言って、それで話は終わらない。
基本ということは発展・応用があるということだ。
当然、石垣は、建物部分の土台として一周ぐるりとめぐらされている。
〈写真F〉

〈写真G〉

しかし、一周巡らすとなると、必ず以下のような問題が何処かで起きる(図N参照)。
基本の石垣は、片方の断面が真っ平らで、一方がガタガタである。
石垣の繋ぎ合わせ方次第では、以下のような隙間が出来ることになる。
〈図F〉

当然、こうした隙間は埋めなければならないと具合が悪い。
ではどうするか?
ひとまず、やりかたは二つある。
手順1.
ガタガタの面の石垣の各段を全て5プレート厚に調整。
そのうえで、側面ポッチブロックを各段に貼り付ける。
5プレート厚は、ブロック2ポッチ分相当である。
〈図G〉

手順2.
先の側面ポッチブロックにプレートやブロックを貼り付け、
最後に各段にタイルを貼り付けて平らに均す。
足した分は、濃灰とタン以外の色で着色している。
〈図H〉

手順3.
組み合わせると、ピタリと埋まる(図I参照)。
足した部分をひとまず全部タンに直したものが図Jである。
〈図I〉

〈図J〉

別解。
最も単純なのは、基本の石垣をリフレクトしたものを作ることである。
ブロックの赤い方が、基本の石垣。青い方が、それをリフレクトしたものである。
以下、便宜上、赤の石垣を『メス』、青の石垣を『オス』と呼ぶ。
〈図K〉

無論、平らな面同士はピタリと繋がる。
〈図L〉

ならば以下のように、
オス・メスそれぞれのガタガタの面同士が接した場合はどうするか?
〈図M〉

例えば図Gのように、
メス側のガタガタの面を5プレート厚で調整、
側面ポッチブロックを貼り付けたものに、
以下のようにプレートやブロックを貼り付け、
表面にタイルを貼って平らにする。
オス側は特にいじらない。
〈図N〉

こうして組み合わせると、ピタリと埋まる。
〈図O〉

〈図P〉裏側の状態。

〈図Q〉埋めた部分をタンで塗り直すとこうなる。

おそらく、こういった感じで石垣を成形したのだろう。
実際は、上部の荷重に耐えられるよう、
もっと支えの壁を厚くしたり柱を足したりして頑丈に作ったはずである。
今回その点は割愛している。
しかし、実に手が込んでいる。
作図してみて、その凄さを実感する。
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蛇足ながら最後に。
世界遺産展から話はずれるが、
「どうすれば上手く作れるようになりますか?」
以前、私に向けられたこの難問にどう答えるか?
とにかく他人の作品をよく見て、
どう組んだのか自分の頭でギリギリまでよく考えましょう!
というのも一つの回答として有効だろう。
およそ解決方法に目鼻が付けば、後は如何様にも出来る。
作者と全く同じくすることは出来ないにしても、
それに限りなく似たものを作ることは出来るはずである。
そういう訓練も大事なのではないかと筆者は思う。
次回に続く。
註※ 写真@〜Gは筆者が撮影した。
また、図@〜Qは、LDDを用い全て筆者が作図した。