19.
『華城(ファソン)』より長安門
作:伊藤剛 / 監修:直江和由
『華城(ファソン)』より長安門
作:伊藤剛 / 監修:直江和由
〈画像@〉

(画像引用元=Wikipedia韓国語版より『水原華城(수원 화성)』 、ウィキメディア経由)
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大韓民国京畿道水原市(キョンギド、スウォン)にある
李氏朝鮮時代(18世紀)の城塞遺跡である。
築城主は、李氏朝鮮第22代国王・正祖。
1794年から二年の歳月をかけて、
父・荘献世子(チャンホンセジャ)の陵墓を取り囲むように建てた城塞だ。
この長安門は、華城の北側にある事実上の正門である。
水原が中国・長安のような華やかな文化都市になることを願って名付けられた、
と言われている。
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特徴としては、まずは屋根の照りだろう。
こうした屋根は、やはり中国の影響と思われるが、
しかし、中国のものは両端の照りが非常に強い。
例えば、東晋王朝時代(4世紀)に創建された
中国仏教の大寺院・江天禅寺(こうてんぜんじ/別名・金山寺)の場合、
大屋根の両端は跳ねるように反り返っている。
〈画像A〉金山寺(中国・江蘇省鎮江市)

(画像引用元=Wikipedia Commonsより、镇江金山寺)
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こうした照りに比べて、華城の場合はそこまで極端ではない。
〈画像@再掲〉

(画像引用元=Wikipedia韓国語版より『水原華城(수원 화성)』 、ウィキメディア経由)
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しかし、日本の社寺にみられる照りに比べると、その傾きは強い。
例えば、奈良時代(8世紀)に創建された東大寺大仏殿の屋根を見ると、
その傾きが比較的緩いことが判る。
〈画像B〉東大寺大仏殿

(画像引用元=Wikipedia日本語版より、東大寺)
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華城は、その丁度、間といった感じだろうか。
韓国の社寺建築のもう一つの特徴としては、
屋根の棟にも照りが反映されている点だろう。
中国や日本の場合、多くは棟が水平であるが、韓国の場合は棟にも照りが反映されている。
こうした特徴は、曹渓寺(ソウル市)や仏国寺(慶州市)、仙巌寺(順天市)など、
宗派を問わず見られる特徴である。
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以上のように比べてみると、
社寺建築の技術が、どのように中国から伝播したか垣間見ることが出来る。
そうしたことを踏まえて、改めて作品を鑑賞してみよう。
〈写真@〉

照りの強い屋根、反り返った棟、その特徴がきちんと再現されている。
〈写真A〉

組み方としては、衒いのない王道の積分。
しかし、プレートの組み合わせで細かく調子を変えながら美事に曲線を描き出している。
〈写真B〉

〈写真C〉

続いて、城壁。
それほど奇を衒った感じはしない。
〈写真D〉

楼の下の壁は新灰を基調とする。
側面ポッチつきのブロックをランダムに並べ、タイルを貼ったと思われる。
よくある手法だ。
〈写真E〉

半円状の壁は、ヒンジを使わず、ブロックの組み合わせで曲げているようである。
〈写真F〉

〈写真G〉

…正直なところ、屋根の作りは気になったものの、
城壁の作り方まではちゃんと見ていなかった。
多分、こんな感じで円形を作ったのだろうという漠然とした工作知識で流したのは事実だ。
本音を言えば、個人的には見ていてあまり面白い作品ではなかったというのもある。
そのものが地味というのが一つ。
そして、割とレゴの王道を行く組み方で、目新しさがなかったというのが一つ。
そういう点では、初心者には馴染みやすく、
またレゴの良さを伝えるには最適なのだろう。
が、しかし、物慣れてしまった私には物足りなく思えたのも事実だ。
いずれ、また関西で展示があるだろう。
その時に改めてきちんと確認してみたい。
初心忘るべからず。
註※
写真@〜Gは筆者が撮影した。
ラベル:作例研究