2018年03月09日

レゴ世界遺産展探訪1

 ★ 日本編1 ★

〈写真@〉今回のチケット。
チケット.jpg

現在、大阪、大丸心斎橋店で、
〈PIECE OF PEACE『レゴⓇブロック』で作った世界遺産展PART-3〉が開かれている。
今回は、そこに展示されている作品の中から、建物ビルダーとして私が注目した作品について書いてみたい。
まずは、日本編。

     ★ ★ ★ ★ ★

レゴは何でも作れるというが、
確かに、〈無理をすれば〉何でも作ることが出来る。
しかし、どんな素材にも相性の悪い組み合わせというものはあって、
例えば、レゴと伝統的な日本建築というのは頗る相性が悪い。
レゴはデンマーク発祥の玩具であり、パーツの色はやはりヨーロッパの色だ。
赤一つとっても、日本古来のウエットな赤とは異なる。
色の違いもそうだが、建具や屋根の造作も大きく異なる。

糸屋格子に蔀(しとみ)、襖に障子、犬矢来…、
そんな気の利いた建具パーツがあるはずもなく、
やるとなれば色んなパーツを組み合わせてそれらしく作り出すしか道はない。
が、これらを違和感なく再現しようとするとなかなか難しい。
屋根はさらに難しい。
特に、社寺建築独特の照り(屋根の反り)を伴う
入母屋(いりもや)造りや錣屋根(しころやね)、唐破風(からはふ)など、
複雑な傾きを伴う入り組んだ屋根を美しく作ることはなかなか至難である。

こうした難問を世界のビルダーはどうやって解決したのか、気になるところである。

★ ★ ★ ★ ★

1.
『紀伊山地の霊場と参詣道』より、
高野山金剛峯寺根本大塔
作: Andy Hung

高野山は、和歌山県北部に連なる1000メートル級の山々の総称である。
弘仁7年(816年)、後に真言宗の開祖となる空海がこの地を嵯峨天皇より賜り、
金剛峯寺を中心とする一大宗教都市を拓いた。
この大塔は、昭和12年(1937年)に再建されたもので、
胎蔵大日如来(たいぞうだいにちにょらい)と金剛界四仏などが安置されている。
建物の特徴としては、一階部分が方形、二階部分が円形という構造で、
これは真言密教の世界観を表していると言われている。

〈画像@〉実際の金剛峯寺壇上伽藍より根本大塔
Danjogaran Koyasan16n4272
(画像引用元=Wikipedia日本語版 金剛峯寺より、ウィキメディアコモンズ経由)
※画像クリックで引用元を表示

一階、二階とも、角が軽くめくれ上がった方形屋根が葺かれているが、
これをレゴで再現するとこのようになる。

〈写真A〉
高野山根本大塔1.jpg

この規模になると、プレートの積分での制作がやはり妥当だろう。
桟瓦(さんがわら)の作る波形はジャンパープレートを用いて成形。
上手いものである。

精密な日本建築を手がける場合、存外にえげつない造作になるのは、
屋根の裏側だ。
むき出しの垂木(たるき)や軒桁(のきげた)の生み出す構造美を
どれほど再現できるかが勝負になる。

〈写真B〉
高野山根本大塔2.jpg

円形の塔屋から垂木が放射状に延びる。
〈魂は細部に宿る〉とはよくいったものだ。
こうしたところに手を抜かないことが肝心。

〈写真C〉
高野山根本大塔3.jpg

次に建具。
私が注目したのは、この格子窓の作り方。
通常、最も簡便に格子窓を作るなら、
以下の図@のように、
1x4以上のプレートに1x1のプレートを一つおきに配置したものを
複数個重ね合わせて横にして表現している。
図@の場合、茶色1x4が縦の桟、黄色の1x1が横の桟である。

〈図@〉
格子1・2.jpg

無論、空白部分が格子の枡目を表すわけだが、
しかし、この作者は、
図Aのように、
長いプレートに1x1ラウンドプレートを隙間なく並べたものを
複数個重ねて横にして表現している。

〈図A〉
格子3・4.jpg

格子の目の細かい枡目は、
ラウンドプレート独特の形状が生み出す陰翳を利用して再現している。
こうした寺社建築の塔屋のみならず、数寄屋建築の町家などにも応用できそうである。

…ちなみに、
前回まで連載していた拙作の北観音山鉾町の町家の格子窓に、これに似た技法を使っているが、
全くの偶然である。

次回に続く

註※
特に指示のない限り、写真は全て筆者撮影。図は、LDDで作者が作図した。


posted by KM at 21:31| Comment(0) | 作例研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

クリブリコンテスト出品作品(7-12)

★ 電柱等構造物編3 ★

前回の続き。
まずは、山鉾周りの構造物から。

山鉾の周りは、以下の写真のように格子戸と呼ばれる囲いが巡らされているが、
作品では手前部分の囲いは省略している。

〈写真@〉
山鉾囲み.jpg
〈写真A〉
山鉾囲いなし.jpg

格子戸は、実際には無垢材で出来ている。
ニスぐらい塗ってあるのかもしれない。雨風に馴染んだ風合いだ。
こうした無垢材をレゴで表現するのは難しい。
そのものズバリの色はレゴにないので、
おそらくはそれに近い茶色でまとめるのがベターなのだろう。
しかし、一部、茶色での供給のないパーツを使用せざるをえなかったため、
やむなく黒でまとめることとなった。

一方を省略して開いたのは、その方が山鉾が綺麗に見える、
というのもあるが、それ以外にも戦略的な事情がある。
ただ、ここで書くとさらに長くなるので、別の機会に託すことにする。

     ★ ★ ★ ★ ★

次に提灯飾り。
出来る限りリアルに近づけたいので、
数揃えられるところは全て同じにしている。
今回、提灯の数、配置は実際のものと同じである。
縦列中央の頂点は赤の提灯だが、無論それも同じである。

〈写真B〉
IMG_5341.jpg
〈写真C〉
IMG_5425.jpg

提灯飾りには狭い屋根板の上にもう一つ、透明な屋根が載っている。
素材はFRPだろうか?
こうした屋根は、山鉾の両端の破風の上にも載っている。
どうやら雨避けのために新たに設えられたものらしい。
山鉾の上の屋根は、巡行当日は撤去される。
これは、提灯飾りの分だけ再現した。
1x2x2 の透明パネルを左右三つずつ並べ、
ヒンジで結んで角度を付け屋根にしている。
これは、提灯を吊っている梁の上に載せているだけで、
どこにも固定されていない。

〈写真D〉
山鉾屋根覆い.jpg

山鉾の分を再現しなかったのは、
無理に作って載せると不細工だったからだ。
あった方がリアルであるかもしれないが、
仕上がりが美しくないのなら止めた方がいい。

〈写真E〉
提灯飾り、屋根.jpg

     ★ ★ ★ ★ ★

最後に御神酒樽。
祇園祭の各山鉾には、伏見の蔵元から菰樽(こもだる)が奉納される。
菰とは、マコモや藁で作った筵(むしろ)のことである。
江戸時代、上方の酒を江戸に輸送する際、
言わばクッション材として樽に巻き、使っていた。
後に、他社の樽と区別できるよう、
巻いた菰に屋号や美麗な絵を描き、その文化が今日に伝わっている。
北観音山は、月桂冠のようである。

〈写真F〉
IMG_5517.jpg

この樽は、以下のようにパーツの上下をひっくり返して作っている。

〈図@〉
御神酒樽.jpg

今回、菰のざらついた触感をイメージさせるために、
白のグリル付円柱ブロックを用いた。

     ★ ★ ★ ★ ★

結びに。
多少デフォルメを加えたものの、概ね今回は実在の風景を写したものである。
和のものというのは総じてレゴに落とし込みにくいもので、
それをテーマにするというのは実に骨の折れるものだった。
自画自賛ながら、善戦した方ではないのか?
それで2位までなったのだから90点といったところか?
しかし、こうして自らの作品を分析して書いてまとめてみて、
改めて参考資料の読み込みなどで足らない部分があったことが浮き彫りになった。
そういう意味では-10点。甘いかもしれない。
ま、とりあえず80点ということにしておこう。

ということで、この回はこれでおしまい。

註※写真@〜Fは筆者撮影。図@はLDDにより筆者が作図した。
posted by KM at 19:00| Comment(0) | 作例研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

クリブリコンテスト出品作品(7-11)

★ 電柱等構造物編2 ★

前回の続き。

〈写真@〉
IMG_5349b.jpg

今回、電柱の制作に用いたのは、
軸繋ぎ(正式には cross axle extension ) と呼ばれるパーツである(図@の左端)。

〈図@〉
電柱仕組み.jpg
このパーツは主に Technic シリーズの創作に使うものだが、
実はかなりの優れ物で、カラクリなどの機械系の工作以外の現場でも私はよく使う。
電柱の下から二段目の黄色の部分は、電柱標識版である。
しばしば電柱に巻かれている虎柄のあれだ。

レゴで電柱を作る場合、オーソドックスな方法として、
2x2 の円柱ブロックを積分する方法がある。

〈図A〉
電柱2.jpg
しかし、この方法でやると電柱には些か太すぎる。
実際の電柱は、成人なら男女問わず一抱え出来る太さである。
レゴで再現するならば、直径1の円柱が望ましい。
しかし、これがなかなか上手くない。
確かに、1x1 の円柱パーツがあるにはあるが、これを積分すると以下のようになる。

〈図B〉
電柱4.jpg
積み上げると、接合部分に節が出来て見てくれが汚い。
実際の電柱は、継ぎ目や節のない鉄筋コンクリートの円柱である。

直径1の円筒ならばTechnicのパーツにもあるが、
しかし、これには誤嚥時の窒息防止のためだろうかスリットが付いている。
〈図C〉
電柱3.jpg

これで柱を立てたなら確かに綺麗な円柱が出来そうだが、
しかしどうやってもこのスリットが見えてしまい、これもよろしくない。
そこで、妥協案として〈図@〉のパーツの採用となる。
完全な円筒ではないが、繋ぎ合わせて柱を作っても節が出ず、比較的表面は滑らかだ。
あまり違和感はない。
十字軸で繋ぐので強度もあり、申し分ない。

柱上変圧器は、グリル付円柱ブロックで出来ている。
二つ積み上げると、あの襞の付いた独特の円柱状の筐体が出来る。
〈図D〉
柱上変圧器.jpg

     ★ ★ ★ ★ ★

今回、軸繋ぎは、電柱だけでなく、町家の屋根にも使用した。
軽い凹みのある円柱を横にすると、瓦屋根に見えるのではないかと思って使ってみた。
これは私としては初めての試みである。

〈写真A〉
屋根瓦2.jpg
〈写真B〉
屋根瓦.jpg

見た目は悪くないが、断面の処理が難しくこの時はそのままにした。
今でも、もう少し何かやりようがあったような気はしている。

次回、最終回。
註※写真@〜Bは筆者撮影。図@〜DはLDDにより筆者が作図した。
posted by KM at 08:00| Comment(0) | 作例研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。