前回の続き。
祇園祭期間中、鉾町周辺の町家では、
虫干しを兼ねて、所蔵の屏風や掛け軸などの美術品が窓越しに一般公開される。
これを屏風祭(びょうぶまつり)と呼ぶ。
下の二枚も、北観音山鉾町の町家のもので、窓越しに撮影したものである。
〈写真@〉

〈写真A〉

(いずれも筆者撮影)
北観音山の会所は、飽くまで祭りの管理・運営などの拠り所であるため、
屏風祭は行われていないが、
今回、祭りの雰囲気を凝縮するために、
敢えて、この祭りの様子も作品に取り入れた。
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しかし、取り入れると言っても簡単な話ではない。
以下の写真のとおり、
本作は、何と言っても山鉾がメインである。
町家は雰囲気作りの脇役に過ぎないため、規模は極限まで削っている。
〈写真B〉

従って、曳山をどかしてしまうと、
建物自体は4幅分しかない。
写真Cを見れば一目瞭然だが、本当に薄い。
〈写真C〉

しかも、その中2幅分は壁や柱など建具で占められるため、
自由になる部分は残り2幅分しかない。
普通に組もうとすると、殆ど何も展開出来ない状態である。
そこでどうしたか?
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以下の作品は、2014年11月29日、兵庫県神戸市で開かれた
第2回関西レゴオフに登場した作品である。
〈写真D〉

(筆者撮影)
制作者は、ハンドルネーム・紙紙さん。
写真は、すでに展開した状態だが、
折りたたむと、タテ・ヨコ・高さ、およそ6x6x6ポッチの立方体となる。
こうした一連の作品群をFRG_CUBEと呼ぶ。
“FRG”とは、“fragile”
(フラジャイル、英語で〈壊れやすい〉〈脆い〉の意)の略とのこと。
紙紙さんは、この立体の発案者でもある。
本来は、こうした箱型のユニットを持ち寄り、
接続して世界を拡張できるよう考えたそうだが、
その後の展開で、接続無し、単一での完結もよしとなったようだ。
2014年当時、Twitter上では有名だったそうだが、
その頃、私はまだTwitterを始めていなかったため、これを知らなかった。
レゴオフで、これを見たときは、かなり衝撃を受けたことは間違いない。
箱の中から、螺旋階段が出、カウンターが表れ、グラスの看板が下がり、
最終的にはバーになるという実に面白い作品であった。
(FRG_CUBEの詳細はこちら→Twitterより #FRG_CUBE
バーの最新版は以下のツイート)
あんまりネタがないので、ウチのバーの、最新版を #FRG_CUBE pic.twitter.com/y2BlFvHmkk
— 紙 紙 WF4-15-8 (@kami_si) 2016年9月14日
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屏風祭の空間は、この作品の考え方をヒントに作った。
畳の間をレギュレーション外に展開しても、
展示の際に規定の範囲にきちんと折り畳み収納できれば問題ないと。
無論、コンテスト期間中は展開出来ないため無駄な機能には違いない。
他の作家はどうしているか判らないが、
こうしたものを作るときの手順は、完成形から逆算していく。
完成形のイメージは、
三和土から上がり框、縁に座布団と空の湯飲み茶碗、畳の間に屏風、装飾に古風な燭台。
つい今し方まで、誰か客人が上がり框に腰掛け、主と話し込んでいたようなイメージだ。
こうしたものをどう詰め込むか、あとは思考による実験に頼った。
畳の位置を決め、屏風の位置を決め、
頭の中で二つに折ったり、倒したり、あれこれしながら今の形に辿り着いた。
もう少しスマートな作り方もあったかもしれないが、これが当時の限界だった。
因みに下の写真は、祭りの様子を展開したときのものである。
〈写真E〉

〈写真F〉

写真Fの左端、
判りづらいかもしれないが、規定内に収めるため、強引に2幅で山鉾の模型を作った。
これは屏風祭で見つけた以下の模型を参考にした(写真G参照)。
屏風祭を開催する町家では、時折、こうした模型を見かけるため、本作でも取り入れた。
〈写真G〉

(筆者撮影)
屏風祭カラクリの展開の様子については、以下の拙作の動画を是非ご覧頂きたい。
(屏風祭カラクリの展開は、8分10秒辺り)
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町家編、最後に二階の片隅。
〈写真H〉

隙間があったので、生け花を置いてみた。
祭りというハレの場、京都なら季節の花を生けて客人をもてなすだろうと考えた結果だ。
手持ちの植物パーツをざっと眺めて、
何となく、水盤に黄色いアイリスというイメージが湧き、形にして配置したが、
よくよく考えると、アイリスの開花期は4〜6月で、7月は季節外れだなと気づいた。
詰めの甘さを感じる。
まあ、見立て方次第でどうとでも言えるので
以後、グラジオラスの花(開花期、7〜10月)ということにする。
次回に続く。