2018年11月09日

レゴ世界遺産展探訪13

★ アジア編4 ★

21.
『ピュー古代都市群』より
ボーボージー・パゴダ
作:Gavin Foo

ピュー族は、1世紀から11世紀頃までミャンマーに存在したとされる
詳細不明の民族集団である。
インドのヒンドゥー教世界の君主制に上座部仏教の思想を足し合わせた、
独自の統治制度を持っていたとされる。
統一王朝ではないらしく、テーゴウン、ベイッタノーなど
エーヤワディー川(旧称イラワディ川)中流域に、
少なくとも七つの城郭都市が発見されており、
それぞれ王がいたものと考えられている。
中でも最大の城郭都市は、エーヤワディー川中流域南端の
シュリー・クシェートラ(ビルマ語では『タイェーキッタヤー』)で、
およそ3世紀から10世紀まで存在したと言われている。

ボーボージー・パゴダは、そのシュリー・クシェトラ城外に建つ仏教遺跡である。
煉瓦造りの釣鐘型をした建物で、特に目立つ装飾はない。
基部の南東に内部に続く通路があるという。発見時、内部には、
裏面に文字の刻まれた多数の磚仏(せんぶつ/粘土などで型抜き、焼成した半肉の仏像)が安置されていたという。

〈画像@〉
20160810 Bawbawgyi Pogoda Sri Ksetra Pyay Myanmar 9252
(画像引用元=Wikipedia英語版”Pyu city-states”)
※ 画像クリックで引用元に遷移。

パゴダ(pagoda)とは、仏塔を意味する英語である(英語だったとは知らなかった)。
Wikipediaによると、
〈日本では主にミャンマー式の仏塔を意味する〉という(そうだったんだ!)。
所謂、仏舎利塔のことであり、釈迦にまつわる聖遺物、
またはそれに代わる経文を安置する建物である。

このパゴダの詳しい成立年代は不明だが、4世紀以降のものらしい。
11世紀のパガン朝(ビルマ族最初の王朝)の下で建てられたシュエズィーゴン・パゴダや、ヤンゴンのシュエダゴン・パゴダなどの原型になったと言われている。

     ★ ★ ★ ★ ★

残念なことに、アジアの遺跡というのは兎角マイナーで地味である。
ヨーロッパのようなロマンティックでメルヘンチックで判りやすい感じは一つもない。
筆者はかつて大学を世界史で受験したため何となくピュー族のことは覚えていたが、
だからといって遺跡の一つ一つまで詳らかなわけではない。
作品を見ても、へぇ、こんなのがあったんだ、という程度。
東南アジア史には、あまり関心が無い所為もある。
鑑賞者の多くも、割と流して見ている感じである。
確かに流してしまいそうではあるが…

この作品、
ビルダーの視点から見るとちょっと面白い。

〈写真@〉
ピュー2.jpg

作者曰く、

〈(前略)、よく調べると、建物の壁面に溝が有ることに気付きました。
その為、建物の筒型の部分は、ブロックの突起の有る面を内側に向けて作りました。
この珍しい方法を使ったことで結果的に、表面がより細かく再現することが出来ました。〉

という。

〈建物の壁面の溝〉が何を指しているかは不明であるが、
ひとまず二つの可能性を述べる。

全体的にそういう溝が装飾されているわけではないが、
確かにドーム天井の付け根の辺りに溝、というか縦の筋が見える(画像@参照)。
見る限りにおいて、風化により表面を覆っていたものがはげ落ち、
内部構造が透けているようである。
おそらく基礎となる部分を円に内接する多角形(何角形かは不明)に煉瓦で積み上げたのだろう。
多角形の角の部分が縦の線として露出しているらしい。
一つに、それのことなのではないか?
二つに、単純に煉瓦を積み上げることで出来る筋のことかもしれない。

     ★ ★ ★ ★ ★

ともかく、
なるほど、確かに円筒部分は全てパーツの裏側を表にして貼り付けてある。

〈写真A〉
ピュー4.jpg

確かに珍しい手法だ。
もっとも、この世界遺産展には、この珍しい手法を用いた作品がいくつかある(※)。
※詳しくは以下のページを参照されたし
レゴ世界遺産展探訪3・金閣寺
レゴ世界遺産探訪6-3・五箇山合掌造り

そこで、一体、どのような構造になっているか考えてみたい。
プレートを山なりに重ねて曲面を作る。
これを四組用意し、貼り合わせて円柱を作る。
手法としては常套手段の一つであり特に目新しくもないが、
面白いのは、それぞれの円弧の末端の処理である。
よく見ると互い違いに1x2のレール付プレートを取り付け、
約半ポッチ分の飛び出しを作っている。
こうすることで、より滑らかな曲面の再現を実現したのが判る(写真A参照)。

以下の図は、そうした情報をもとに円筒を簡易に再現したものである。
角の新灰の部分が、レール付プレートを貼り付けた箇所である。

〈図@〉
ピュー古代遺跡1.png

それを俯瞰すると、およそこんな感じになる。
一面の弦の長さを10にして再現したので少し角を感じる円柱に仕上がっているが、
さらに規模が大きくなればなるほど山なりに詰むプレートの数も増えるので、
より滑らかなものになるだろう。

〈図A〉
ピュー古代遺跡2.png

再現して判ったことは、
裏返しに作るため、面同士の留め方がなかなか複雑な点である。
おそらくこんな感じで作ったのだろう。
作業の流れをGIFにまとめてみた。

〈GIF〉
ピュー作り方.gif

ところで…、
私はこの作品を見ていて、
このやり方は巨木の再現にも応用できるのではないかと感じた。
例えば、屋久杉やレバノン杉、メタセコイア、
架空ながらユグドラシルのようなものである。
そうした巨木の幹の再現にはもってこいの技法ではないか!
もっとも、なかなか巨木そのものを再現することはないだろうが、
例えば、ファンタジーにありがちなツリーハウスの木の幹の部分などに
応用は効きそうである。

     ★ ★ ★ ★ ★

建物には、換気のためか一つだけ窓がある。
この窓の取り付け片を考える。

〈写真B〉
ピュー1.jpg

側面ポッチ付ブロックにL字プレートを積み、曲面に沿って回転させて沿わせる。
多分、こんな感じでやったのではないだろうか?

〈図B〉
ピュー古代遺跡15.png
〈図C〉
ピュー古代遺跡14.png
〈図D〉
ピュー古代遺跡13.png

     ★ ★ ★ ★ ★

最後に、塔の天井部分。
なだらかな丘状のドーム天井となっていて、天辺に円錐状の装飾が付いている。
五重塔や宝篋印塔(ほうきょういんとう)ならば『相輪(そうりん)』と呼ぶところだが、
何というのだろうか? 寡聞にして知らない。

〈写真C〉
ピュー3.jpg

この世界遺産展には、このドーム天井の建物が数多く出品されている。
それぞれに作り手の癖が現れていて、それはそれで分析のしがいのあるものだ。
いずれまとめて特集したい。

註※
写真@〜Cは筆者が撮影した。
図@〜D、及びGIF画像は、LDDを用い筆者が作図した。


posted by KM at 08:00| Comment(0) | 作例研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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