2018年04月20日

レゴ世界遺産展探訪7−2

★ 日本編 7−2 ★

前回の続き。西洋美術館本館、外壁について。

西洋美術館本館の壁は、玉石を混ぜたコンクリートパネルが用いられている。
当時、このパネルの製作を請け負った
株式会社ミナト建材(現、株式会社ヤマックス )によると、
正式には〈玉石打ち込み仕上げPC版〉と呼ばれるパネルらしい。
PCとは、プレキャストコンクリートの略で、予め工場で量産し、
現場ですぐに取り付けられるよう加工した鉄筋コンクリート部材のことである。

〈写真@〉
西洋美術館本館4.jpg

〈写真A〉
西洋美術館本館3.jpg

壁を拡大する(写真B参照)。
パネルには、ぎっしりと青石が敷き詰められている。
湿気を含むと色が変わる石だそうで、
天候により建物の見てくれの雰囲気が大きく変わるという。
パネルは、半ば煉瓦を積むように、互い違いに張られている。

〈写真B〉
西洋美術館本館5.jpg

     ★ ★ ★ ★ ★

では、これを作者はどのように再現したのだろうか?

〈写真C〉
西洋美術館2.jpg

壁面は、1x4と1x3の濃灰のタイルを用い再現している。
晴天時の本館の壁面はどちらかというと新灰に近い色合いだが、
床面とのコントラストを考えると濃灰でもいいだろう。
重厚感があって美しい。

〈写真D〉
西洋美術館3.jpg

雑な表現だが見た目は、濃灰のただの箱である。
しかし、作品を近くで見ると驚くなかれ、
壁面のパネルは実物同様、およそ半ポッチ程度ずらして、
互い違いに積み重ねられていることが判る。
さらに驚くべきは、建物のコーナーの処理の仕方。
ここも実物同様の見た目を保持するこだわりの作りで、しかもきちんと平仄が合っている。
素晴らしい仕事だ。

〈写真E〉
西洋美術館9.jpg

しかし、ここで疑問が湧く。
一体どうやって組んだのだろう?

     ★ ★ ★ ★ ★

単純に横組みしただけは、こんな仕上がりにはならない。
半ポッチ程度ずらして積むなんて、小手先の芸当ではない。
とりあえず判りそうなところから順に考えよう。
まず言えることは、
コーナーの処理に、以下のどちらかのパーツを使ったということ。

〈図@〉ブラケット1x4
ブラケット1x4.jpg

〈図A〉ブラケット2x4
ブラケット2x4.jpg

感触としては、おそらく後者だろう。
前者のパーツは広く流通している形ではあるが、この濃灰はレアパーツだ。
まず見たことがない。
ひとまず、後者であるとして話を進める。

2x4のブラケットに1x4のタイルを張り、縦に置いたものを真横から見ると、
丁度、写真と同じになる。
これで間違いないだろう。

ブラケット2x4縦置き.jpg

〈写真F〉
西洋美術館10.jpg

外壁パネルの列は、全部で4層。
下から3層は、1x4タイルとブラケットの組み合わせで出来ているが、
最上層だけは、1x3タイルとプレートの組み合わせで出来ている。
3幅のブラケットが流通していないため、そうなったのだろう。

〈写真G〉
西洋美術館11.jpg

しかし、そこから先が全く判らない。
会場での思考はそこで手詰まりとなった。
お家に帰って写真を見ながら、ゆっくりよく考えようという結論に至る。

     ★ ★ ★ ★ ★

これに関しては、制作過程を記録した作者公式のタイムラプス動画があり、
それを見れば解決する。そんなことは判っているが、それを見て納得するのも癪なので、
とりあえず自分の頭で考える。
事実、想像される範囲内で自分なりに答えを出してみて、作ることに一応成功した。
方法としてはかなりえげつないものになったが、それは次回に回すことにする。

次回に続く。

註※ 
写真@〜Gは筆者が撮影した。
また、図@、Aは、LDDを用い筆者が作図した。


posted by KM at 08:00| Comment(0) | 作例研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年04月19日

レゴ世界遺産展探訪7−1

★ 日本編 7−1 ★


9.
『ル・コルビュジエの建築作品
−近代建築運動への顕著な貢献−』より
国立西洋美術館
作:大澤よしひろ

〈写真@〉
西洋美術館本館2.jpg

〈写真A〉
西洋美術館本館1.jpg

フランスを代表する近代建築の世界的大家ル・コルビュジエ、
1959年(昭和34年)の作品。
第二次大戦後、フランス政府により敵国資産として接収された
実業家・松方幸次郎蒐集の美術品、通称〈松方コレクション〉の返還に際し、
その展示・保管のための施設として東京・上野公園内に建設された美術館である。

この建物は、〈無限成長建築〉をコンセプトにしており、
建物の中央、19世紀ホールから渦状に展示室が広がり、
将来的には外へ外へと拡張できるよう考案されている。

筆者は関西在住だが東京とは縁が深く、この西洋美術館も馴染みの場所なのだが、
如何せん収蔵作品や特別展がメイン故、建築美に気づいたのは比較的最近のことである。
世界遺産登録され、建物に光が当たったことで、
ようやくこの建物の真価に気づいた次第だ。
不勉強で恥ずかしい話である。

     ★ ★ ★ ★ ★

作品を見てみよう。

〈写真B〉
西洋美術館.jpg

まず気になったのが、実は建物そのものより阿弥陀状の床面である。
仕切りの線の厚みは縦も横も横にしたプレート1枚分。
これを原則として、それぞれ幅の異なる不規則な矩形を作って充填するというのは、
なかなか手間だ。計算が面倒臭い。

〈写真C〉
西洋美術館4.jpg

しかしこんな線があったかな、と疑問に思う。
建物の前庭には、ロダンの『地獄の門』や『カレーの市民』などといった
大型の彫刻作品が展示されているため、どうしてもそちらに気を取られてしまう。
さんざん出入りしているわりに、床がどんなだったかいまいち記憶にない。

先日、久しぶりに同館を訪ねた際、床面をこの目で確認し、
阿弥陀に線が引かれていることを知り、ああこれを再現したのかと納得する。

〈写真D〉
西洋美術館本館6.jpg

〈写真E〉
西洋美術館本館6b.jpg

     ★ ★ ★ ★ ★

続いて、建物屋上。

〈写真F〉
西洋美術館2.jpg

ちょっと違和感を覚えたのは、
中央の巨大な三角錐体の明かり取りの窓。
多少表現の誇張はあってもいいかもしれないが、
それにしても背が高すぎではないのかと思った。

もっとも、プラ板を切り出して作る建築模型とは違い、
レゴの場合はパーツの形状に縛られるため、
特異な形状の再現には無理が伴う。
こうした三角錐体は、簡単そうに見えて、
理想どおりのサイズには作りにくいであろう形状故、
妥協せざるを得なかったのかなとも考えられる。

〈写真G〉
西洋美術館5.jpg

〈写真H〉
西洋美術館6.jpg

ちなみに、
この明かり取りの窓の真下は、建物の中心部、19世紀ホールである。
ここは、常設展示室入ってすぐのところで、
ロダンの彫刻が数体展示されているきりの広々とした吹き抜けの空間である。
以下の写真は、内部から窓の開口部を見上げた際のものである(写真参照)。
生憎ながら、屋上からの写真はない。

〈写真I〉
西洋美術館本館7.jpg

〈写真J〉
西洋美術館本館8.jpg

先の三角錐体の明かり取りの窓の周りには、
逆卍形に、本館二階展示室を照らす明かり取りの窓が配置されている。
M字形の断面を持つ一直線の建屋がそれである。
この窓は、サッシがズラリと並ぶ展示室中二階の照明用空中廊下の屋根部分に当たる(写真K参照)。
かつては、屋上の窓から差し込んだ光がこのガラスの廊下を通り、
室内を広く明るく照らしていたという。

なお現在、この窓は使用されていない。
季節や天候に左右されるため、室内を照らすに十分な光量を確保することが難しく、
また、太陽光に含まれる光が美術品の劣化を招くため不適当と判断されたからだ。
今は、廊下に蛍光灯を並べ、その代わりとしている。

〈写真K〉二階展示室の様子。
西洋美術館本館9.jpg

この部分の作りはなかなか面白い(写真L参照)。
屋根は、1x3白のテクニックアームで再現。滑らかで美しい。
車のドアパーツを用いた屋根末端の処理の仕方が面白い。
ああこんな使い方があったかと驚かされる。
押しつぶされた一斤の食パンのような独特の形状がよく表されており、
さすが、マスタービルダーの仕事と感心する。

〈写真K〉
西洋美術館7.jpg

     ★ ★ ★ ★ ★

次回は、外装について。
実にトリッキーな構造で、かなり謎の多い造作となっている。
じっくり解析してみたい。

続く。

註※ 写真@〜Lは筆者が撮影した。
posted by KM at 18:00| Comment(0) | 作例研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年04月18日

レゴ世界遺産展探訪6−4

★ 日本編 6−4 ★

前回の続き、今回はアマの建具について。

まず、〈アマ〉とは、
世界遺産相倉合掌集落保存財団HP
掲載の『合掌造り関連用語』の解説によると、
〈合掌造りの場合には屋根合掌空間内を言う〉とある。
平たく言えば、建物の屋根裏に当たる部分が〈アマ〉である。
しかし、これも細かく見れば、単に〈アマ〉といってしまうと屋根裏の初層部分、
2層目がある場合はそれを〈ソラアマ〉と言い、さらに3層目は〈サンガイアマ〉という。
語源について詳しくは判らないが、
おそらくは〈上〉を意味する〈天〉から来ているのだろう。

以下の写真は、アマの部分を接写したものだ。

〈写真@〉
白川郷9.jpg

この部分の建具は横組み。
壁も前回同様、横組みの上、裏返して経年美化した板壁に擬している。
ただ、作り方が少々異なるので解剖してみたい。
以下の図は、見た目を元に内部構造を推理し、
建具と壁の一部をLDDで描写したものである。
必ずしもこのとおりではないだろうが、
概ねこういう構造であることは間違いないだろう。

〈図@〉
白川郷壁面サンプル11.jpg

この部分、手前に板が張ってあって判りにくいが、
実は建具や壁は半ポッチ後ろにずらして設えられている。
手前の板を剥がし、建具以外の部分を着色し構造を明確にしたのが以下の図である。

〈図A〉
白川郷壁面サンプル13.jpg

裏から見ると、おそよこのようにはみ出しているはずだ。

〈図B〉
白川郷壁面サンプル12.jpg

     ★ ★ ★ ★ ★

個別に見る。
まずは障子窓。
パーツ構成は、概ね以下の通り。

〈図C〉
白川郷壁面サンプル14.jpg

障子の桟の部分は、グリルタイルで表現しているが、
下地の板には、トランスクリアのプレートが使われている。
おそらく以下のような形で配置したのだろう。
着色して構成を明確にしたものが図Dの右である。
トランスクリアのプレートは、1x2以上のサイズは希少なので、
おそらくこのように対処したものと考えられる。

〈図D〉
白川郷壁面サンプル15.jpg

上下二段に側面ポッチ付ブロックを配置して固定したのだろう。
建具の下端、桟の部分は、本来1x及び1x2のタイルとも色はタンである。
1x3タイルを使用せず、二つに分けているのは、
この作品が発表された当時、1x3タイルが流通していなかったためである。

〈図E〉
白川郷壁面サンプル16.jpg

     ★ ★ ★ ★ ★

次に板壁。
パーツの構成は、概ね以下の通り。これで間違いないだろう(図Fの左)。
板壁の横桟を取り払ったものが図Fの右である。
おそらく、1x2と1x3を互い違いに並べたものと推測される。

〈図F〉
白川郷壁面サンプル17.jpg

さらに板壁の表面を取り払い下地だけにしたのが以下の図Gの左である。
上からタイル、プレート、タイル、プレート、タイルの順に
ミルフィーユ状に組んだのだろう。
これを取り払い、支えの壁だけにしたものが図Gの右である。
ライトブロックの裏面にプレートをはめたものと考えられる。
この部分は、1x1のビームブロックでも同じ効果が得られる。

〈図G〉
白川郷壁面サンプル18.jpg

上の図を反対から見たものが以下の図だ。
タイルの組み合わせが以下のような塩梅なのは、先述の通りである。
今ならば、もう少し単純かつ強固な仕上がりになるだろう。

〈図H〉
白川郷壁面サンプル19.jpg

     ★ ★ ★ ★ ★

「どうやったら上手く作れますか?」
という問いに、折に触れてあれこれ答えてきたが、
今回また、一つの答えとして言えることがある。
それは、
「横組みを極めましょう」
ということ。
上に積んでいくものを横向きに積むと、いつもと違った比率の世界が見えてくる。
この作品はさらにその発展で、
パーツを裏返すことでさらに違う世界が広がることを教えてくれる。
そういう意味でも、これはとても希有な作品である。

横にして愉しむ、裏返して愉しむ。
パーツの見せる表情の変化に気づき、それをビルドに取り入れるためには、
横組みの知識をきちんと身につけなければならない。
事実、これがきちんと身につかないと、まずリアルなものを作ることは不可能である。
横組みについては、それだけでいつかまとめて記事にしたい。

註※ 写真@は筆者が撮影した。図@〜Hは、LDDを用い全て筆者が作図した。

次回に続く。
posted by KM at 08:00| Comment(0) | 作例研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

広告


この広告は60日以上更新がないブログに表示がされております。

以下のいずれかの方法で非表示にすることが可能です。

・記事の投稿、編集をおこなう
・マイブログの【設定】 > 【広告設定】 より、「60日間更新が無い場合」 の 「広告を表示しない」にチェックを入れて保存する。


×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。