2017年07月25日

クリブリコンテスト出品作品(7-5)

★ 町家編3 ★

前回の続き。

祇園祭期間中、鉾町周辺の町家では、
虫干しを兼ねて、所蔵の屏風や掛け軸などの美術品が窓越しに一般公開される。
これを屏風祭(びょうぶまつり)と呼ぶ。
下の二枚も、北観音山鉾町の町家のもので、窓越しに撮影したものである。

〈写真@〉
IMG_5447.jpg

〈写真A〉
IMG_5453.jpg
(いずれも筆者撮影)

北観音山の会所は、飽くまで祭りの管理・運営などの拠り所であるため、
屏風祭は行われていないが、
今回、祭りの雰囲気を凝縮するために、
敢えて、この祭りの様子も作品に取り入れた。

          ★ ★ ★ ★ ★

しかし、取り入れると言っても簡単な話ではない。
以下の写真のとおり、
本作は、何と言っても山鉾がメインである。
町家は雰囲気作りの脇役に過ぎないため、規模は極限まで削っている。

〈写真B〉
IMG_5169.jpg

従って、曳山をどかしてしまうと、
建物自体は4幅分しかない。
写真Cを見れば一目瞭然だが、本当に薄い。

〈写真C〉
IMG_5241.jpg

しかも、その中2幅分は壁や柱など建具で占められるため、
自由になる部分は残り2幅分しかない。
普通に組もうとすると、殆ど何も展開出来ない状態である。

そこでどうしたか?

          ★ ★ ★ ★ ★

以下の作品は、2014年11月29日、兵庫県神戸市で開かれた
第2回関西レゴオフに登場した作品である。

〈写真D〉
IMG_4004紙紙作品.jpg
(筆者撮影)

制作者は、ハンドルネーム・紙紙さん。
写真は、すでに展開した状態だが、
折りたたむと、タテ・ヨコ・高さ、およそ6x6x6ポッチの立方体となる。

こうした一連の作品群をFRG_CUBEと呼ぶ。
“FRG”とは、“fragile”
(フラジャイル、英語で〈壊れやすい〉〈脆い〉の意)の略とのこと。
紙紙さんは、この立体の発案者でもある。
本来は、こうした箱型のユニットを持ち寄り、
接続して世界を拡張できるよう考えたそうだが、
その後の展開で、接続無し、単一での完結もよしとなったようだ。

2014年当時、Twitter上では有名だったそうだが、
その頃、私はまだTwitterを始めていなかったため、これを知らなかった。
レゴオフで、これを見たときは、かなり衝撃を受けたことは間違いない。
箱の中から、螺旋階段が出、カウンターが表れ、グラスの看板が下がり、
最終的にはバーになるという実に面白い作品であった。
(FRG_CUBEの詳細はこちら→Twitterより #FRG_CUBE
 バーの最新版は以下のツイート)



          ★ ★ ★ ★ ★

屏風祭の空間は、この作品の考え方をヒントに作った。
畳の間をレギュレーション外に展開しても、
展示の際に規定の範囲にきちんと折り畳み収納できれば問題ないと。
無論、コンテスト期間中は展開出来ないため無駄な機能には違いない。

他の作家はどうしているか判らないが、
こうしたものを作るときの手順は、完成形から逆算していく。
完成形のイメージは、
三和土から上がり框、縁に座布団と空の湯飲み茶碗、畳の間に屏風、装飾に古風な燭台。
つい今し方まで、誰か客人が上がり框に腰掛け、主と話し込んでいたようなイメージだ。

こうしたものをどう詰め込むか、あとは思考による実験に頼った。
畳の位置を決め、屏風の位置を決め、
頭の中で二つに折ったり、倒したり、あれこれしながら今の形に辿り着いた。
もう少しスマートな作り方もあったかもしれないが、これが当時の限界だった。
因みに下の写真は、祭りの様子を展開したときのものである。

〈写真E〉
IMG_5202.jpg

〈写真F〉
IMG_5215.jpg

写真Fの左端、
判りづらいかもしれないが、規定内に収めるため、強引に2幅で山鉾の模型を作った。
これは屏風祭で見つけた以下の模型を参考にした(写真G参照)。
屏風祭を開催する町家では、時折、こうした模型を見かけるため、本作でも取り入れた。

〈写真G〉
IMG_5455.jpg
(筆者撮影)

屏風祭カラクリの展開の様子については、以下の拙作の動画を是非ご覧頂きたい。


(屏風祭カラクリの展開は、8分10秒辺り)

          ★ ★ ★ ★ ★

町家編、最後に二階の片隅。

〈写真H〉
IMG_5223.jpg

隙間があったので、生け花を置いてみた。
祭りというハレの場、京都なら季節の花を生けて客人をもてなすだろうと考えた結果だ。
手持ちの植物パーツをざっと眺めて、
何となく、水盤に黄色いアイリスというイメージが湧き、形にして配置したが、
よくよく考えると、アイリスの開花期は4〜6月で、7月は季節外れだなと気づいた。
詰めの甘さを感じる。
まあ、見立て方次第でどうとでも言えるので
以後、グラジオラスの花(開花期、7〜10月)ということにする。

次回に続く。


posted by KM at 06:47| Comment(0) | 作例研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月23日

クリブリコンテスト出品作品(7-4)

★ 町家編2 ★

〈写真@〉
IMG_5241.jpg

前回の続き。

祭りの時、会所となる建物には注連縄(しめなわ)が巻かれる。
この注連縄をどう再現するのか、というのはなかなか悩ましい問題であった。

注連縄とは、結界を張り神域を作るための道具である。
注連縄といっても、地域の信仰によって様々な縄の綯い方、飾り方があるが、
一般に、縄に〆の子(しめのこ)という藁を束にし房状にした飾りや、
白い紙を稲妻形に加工した紙垂(しで)と呼ばれる飾りを結んで垂らしたものを指す。

注連縄は、別の当て字で〈七五三縄〉とも書くが、
これは、〆の子の藁束が、順に、三本、五本、七本の組で垂れていることに由来する。
この会所に巻かれているものは、中でもそうした基本的な種類のもののようだ。
細く垂れた藁の房が、軒先で風に揺れている。

スクラップ・アンド・ビルトの結果、私が導き出した答えは次のようなものである。
〈図@〉
注連縄部品.png

タンのランプホルダー(図@左のパーツ)とグリルタイルを
図Aのように波打つように配置すると、
およそそれっぽい感じになる。
一部、白のグリルタイルを挟んでやると、
紙垂と見立てることも出来る。

〈図A〉
七五三縄.png

余談だが、一直線に並べてやると、昭和の居酒屋によく見られた
縄暖簾も出来そうだ。

          ★ ★ ★ ★ ★

ところで、
祇園祭の山鉾のいくつかは、拝観料を支払うことで
屋台に搭乗・拝観することが出来る。
しかし、北観音山の場合、原則そうしたことは出来ない。
拝観は、北観音山鉾町の人間とその関係者にしか認められていないようなので、
必然、内部の写真がネット上に出回る可能性は極めて低い。
事実、私は、内部の詳細な画像を見つけることが出来なかった。
ネット上に見られる画像は、およそ私が撮影したようなものが殆どである。

この建物の二階には、
北観音山の本尊となる楊柳観音(ようりゅうかんのん)像と
韋駄天(いだてん)像がまつられている。

〈写真@〉
IMG_5427.jpg
(筆者撮影)

楊柳観音は、病苦からの救済を司る仏様で、
読んで字の如く、右手に柳の枝を持つ姿で表される。
古来より柳には薬効成分が認められていることから、
薬そのもの、ひいて病気平癒を表すシンボルとなったのだろう。

他方、韋駄天もまた病魔退散を司るものとして祀られている。
一般に韋駄天というと俊足の神様として知られているが、
こちらには小児の病を祓う力があるとされている。

無論これもレゴで作って祀っているが、
こうして説明しない限り、殆ど誰も気がつかない。

〈写真A〉
IMG_5235.jpg

          ★ ★ ★ ★ ★

同じく、二階部分。
道路側に突き出た屋根付きの歩廊は、山鉾に乗り込むためのものである。

〈写真B〉
IMG_5240.jpg

普段は窓や壁で塞がれており、建物の見た目は付近の町家と変わりない。
しかし、祭りの時には、建具がごっそり取り外せるように出来ているようだ。
この時ばかりは、窓と壁の一部を取り払って橋を作る。
実際は、以下のように、歩廊の末端は手摺りの付いた階段になっている。

〈写真C〉
IMG_5423.jpg

〈写真D〉
IMG_5444.jpg

〈写真E〉
IMG_5446.jpg
(いずれも、筆者撮影)

今回はここまで。
次回に続く。

          ★ ★ ★ ★ ★

本日七月二十三日は、丁度、本年の祇園祭後祭宵山。
京都の夏は祇園祭と共に去って行く。
そうした夏の終わりの一幕を、当時、現地で撮影してきました。
初めて実際の映像と自分の作品を組み合わせて映像化した動画です。
よろしければどうぞ。

posted by KM at 12:00| Comment(0) | 作例研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

クリブリコンテスト出品作品(7-3)

★ 町家編1 ★

関西某所住まいとはいえ、京都はなかなか遠い。
そこで、制作にはストリートビューやネット上の画像を使用した。
(注・ここに掲載した筆者撮影の後祭宵山の資料写真は、
いずれも作品提出後の2015年7月23日に撮影したものである。)

普段の新町通、『京都上々もん屋』周辺は、およそ以下のような感じである。

北観音山鉾町006.jpg

北観音山鉾町005.jpg

北観音山鉾町004.jpg
(以上、画像引用元=Google Map 京都市中京区新町通六角付近
ストリートビューより、スクリーンショット)

築年数は不明。
犬矢来に駒寄、祇園界隈の町家の古い佇まいに比べると、
そうしたものはなくシンプルで新しい。
新しいといってもそれなりに古いのだろうが、
昭和に入ってからの普請のような印象を受ける。

早速困ったのは、壁や柱の色である。
壁は濃青とサンドブルーの間のような、何やら中途半端な色で、
レゴブロックにはない色だ。
仮に近似色のサンドブルーと割り切って使うにしても、
基本のブロックやプレートに殆ど供給されてない色である。

柱や梁は日に焼けて、いい塩梅の焦茶色である。
しかし、この焦茶も供給の殆どのない色である。

実在の建物を再現するとはいえ、早速、改変を迫られる。
隣の京料理屋の壁の色を借りて、壁はダークタン。
柱や梁は、黒だと色が濃くなりすぎる気がしたので茶とした。

以下の写真は、
拙作から山鉾を動かし、建物部分だけ写したもの(写真@)。
写真AとBは、宵山当日の様子である。

〈写真@〉
IMG_5241.jpg

〈写真A〉
IMG_5423.jpg

〈写真B〉
IMG_5425.jpg
(写真はいずれも筆者撮影)

          ★ ★ ★ ★ ★

しかし、レゴというのは、つくづく和のものを作るのに向かない素材である。
デンマーク生まれの玩具だから当然だが、建具に和のものがない。
もっとも一部、ニンジャゴー・シリーズで、障子のイラストパーツが出ているが、
障子表に〈忍者〉の文字が堂々と入っていて、とても実用的であるとは言い難い。

キャプチャ1.JPG
画像引用元blick link

格子窓にしてもそうだ。
牢屋の鉄格子はあるが、町家にありがちな目の細かい格子窓のパーツは存在しない。
パーツを組み合わせて一から作ることになる。

          ★ ★ ★ ★ ★

格子窓を作る。
簡単に格子窓を作るなら、以下の〈図@、Aa〉のように、
1x4のプレート一つに、1x1のプレート二つを組合わせたものを任意の組数、積み重ね、
横組にすれば、まずは簡単に出来る。
現在、説明のためにパーツに着色しているが、建具の部分は、本来、全て茶色である。
茶色の1x4プレート部分は横にすることで、縦の桟木に、
黄色の1x1プレート部分は、積み重なることで横の桟木となる。
〈図@〉
糸屋格子・基礎1.png
〈図Aa〉
糸屋格子・基礎2.png

全て、茶色に置き換えると以下のようになる。
〈図Ab〉
糸屋格子・基礎2b.png

しかし、このやり方で作ると、
縦の桟木のポッチがボコボコと見えて奧の見通しが悪く、
全く美しくない。
そこで、以下のように組んだ。
〈図B〉
糸屋格子応用1.png

1x4タイルを使うと、そのまま積分で止めることは出来ないので、
下の横の桟を1x2プレートと青の1x1プレートを組み合わせて裏で止めている。
〈図Ca〉は、表から見た図、
〈図Cb〉は、裏から見た図である。

〈図Ca〉
糸屋格子応用2a.png

この組み方で柱に止める場合、一番端のみL字プレート(黒で着色)を当て、
鉤の手の下の部分で柱(1x1x1片面ポッチ付ブロック、水色で着色)と貼り合わせる。
〈図Cb〉
糸屋格子応用2b.png

全てきちんと組み上げ、
建具のパーツを全て茶色にすると以下のような形になる。
これで目がすっきりと開き、綺麗に見通せるようになった。
〈図D〉
糸屋格子応用3.png

勿論、これで完成としても良い。
しかし、斜めから見ると、上の横の桟木が太く見える(図E、桟木部分を黄色で着色)。
〈図E〉
糸屋格子応用4b.png

もう少し細くしたい。
さこで、1x1プレートから、1x1ラウンドプレートに変更する。
〈図F〉
糸屋格子応用5a.png

斜めにしてみるとよく判るが、角が落ちた分、細く見える(図Ga)。
これを茶色に戻したものが、〈図Gb〉であり、本作で採用した形である。
写真Cは、表から見た図。写真Dは、室内側から見た図である。

〈図Ga〉
糸屋格子応用5b.png
〈図Gb〉
糸屋格子応用5c.png

〈写真C〉
IMG_5227.jpg

〈写真D〉
IMG_5219.jpg

          ★ ★ ★ ★ ★

しかし、ここまで苦労して作ったものの、
実際には、格子窓の上の横の桟木部分は不必要であった。
よく観察したつもりであったが、観察が足りなかったらしい。
恥ずかしい限りだ。

次回に続く。
posted by KM at 08:00| Comment(0) | 作例研究 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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