2017年08月02日

クリブリコンテスト出品作品(7-6)

★ 山鉾編1 ★

祇園祭を再現すると決めたものの、
何より骨が折れたのがこの山鉾の再現である。
何と言っても祭りのメイン。
これがきちんと再現できないことには始まらない。
まずは、今回、制作対象とした北観音山について。

          ★ ★ ★ ★ ★

〈写真@〉
Kyoto Gion Matsuri J09 080
北観音山(2009年、Corpse Reviver撮影)
出典:ウィキメディア・コモンズ (Wikimedia Commons)
(※ 画像クリックで出典先にリンク)

祇園祭の山車のことを総称して山鉾と呼ぶが、
これには五つの形がある。
厄神の依代となる真木(しんぎ)と呼ばれる柱の立つ〈鉾〉(長刀鉾、月鉾など)、
船の形をしたかく〈船鉾〉(船鉾、大船鉾)、
大きな傘の形をした〈傘鉾〉(綾傘鉾、四条傘鉾)、
御神体人形を載せた〈舁山(かきやま)〉(孟宗山、保昌山など)、
真木の代わりに真松(しんまつ)を依り代とする〈曳山(ひきやま)〉
(南観音山、岩戸山など)。
これらのうち、北観音山は形式としては〈曳山〉である
(便宜上以下、単に〈山〉と呼ぶ)。

北観音山は、後祭籤取らず(くじとらず)の二番目の山である。
籤取らずとは、文字どおり、籤引きしないということを名詞化したものだ。
祇園祭山鉾巡行での各山鉾の出番は、毎年籤引きにより変わる。
しかしそのうち、長刀鉾や船鉾といったいくつかの山鉾に限っては予め巡行での順番が決まっており、
そうしたものを籤取らずと呼ぶ。
北観音山はそうした山の一つで、
魔除け・露払い役の橋弁慶山(籤取らず)に続く形で巡行を行う。

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構造について。

山は、直方体の箱形の乗り物である。
屋根までの高さ、地上からおよそ26尺(町家2階相当、約8メートル)、
鉾頭(或いは真松の天辺まで)までだと約80尺(ビル8階相当、約24メートル)。
囃子舞台と呼ばれる囃子方の乗り込む露台部分が、およそ四畳半から六畳分とされる。
北観音山の場合、見た目六畳分くらい(およそ 270x360 センチ程度)はありそうだ。
山の外観は、日本の職人達がこさえた染物、金襴緞子、或いはゴブラン織や中東の絨毯といった
舶来品など豪華な懸装品で飾られているが、中は骨組みだけで中空である。
(北観音山の構造については、こちらの町会HPに組み立ての様子が記録・公開されています。
六角会

〈図@〉
IMG_5443.jpg
(筆者撮影の画像を加工)

屋根は、しばしば寺社建築に見られる切妻の照り屋根。
その屋根の上には真松が飾られ、
松の足下には、左三つ巴の八坂神社御神紋(図A参照)が飾られた
朱色の布が巻かれる。
これを網隠しと呼ぶ。

〈図A〉
八坂神社御神紋.jpg
(八坂神社御神紋/筆者作)
八坂神社御神紋は二つあり、左が〈左三つ巴〉、右が〈五瓜に唐花(ごかにからはな)〉。
こうした御神紋は、祇園祭期間中、山鉾本体や町内の提灯飾りなど至るところで見ることが出来る。

閑話休題、
〈図B〉
説明図1.jpg
(筆者撮影の画像を加工)

〈写真A〉
IMG_5428.jpg
破風下(はふした)には、1833年片岡友輔(かたおか・ゆうほ)作の木彫雲鶴。
天水引(てんみずひき)は、金地錦観音唐草(きんじにしきかんのんからくさ)と
雲竜図を隔年で使用。
写真Aは、筆者が2015年7月に撮影したものだが、この時は前者の観音唐草である。

〈写真B〉
IMG_5440.jpg
〈写真C〉
IMG_5441.jpg
〈写真D〉
IMG_5439.jpg
(いずれも筆者撮影)

細かい人物群像が施された下水引(したみずひき)は、
幕末から明治に活躍した円山派の画家・中島来章(なかじま・らいしょう)による、
伝・関帝祭図(でん・かんていさいず)の下絵。
関帝とは、三国志中の登場人物・蜀の関羽のことである。
彼は死後、軍神として崇められ、忠誠・高潔の象徴となった。
二番・三番水引は、
それぞれ「赤地牡丹唐草文様綴織(あかじぼたんからくさもんようつづりおり)」と、
近年復元された「金地紅白牡丹文様唐織(きんじこうはくぼたんもんようからおり)」。
水引類は、所謂、金襴・緞子(きんらん・どんす)の織物である。

欄縁(らんえん)には、唐獅子牡丹文様など煌びやかな錺金具(かざりかなぐ)が
装飾として施され、四隅には、祇園守が編まれた房飾りが垂れ下がる。

前懸(まえかけ/写真B参照)・後懸(うしろがけ/写真C参照)及び、
胴懸(どうがけ)は、それぞれ絨毯が幕の変わり用いられている。
前懸・後懸は、ともに19世紀ペルシャ製。
胴懸は共に復元品で、うち西面(写真D参照)は〈斜め格子草花文様〉のインド絨毯。
対面の東面は、トルキスタン絨毯である(写真なし)。

〈写真E〉
IMG_5429.jpg
〈写真F〉
IMG_5434.jpg
(いずれも筆者撮影)

山には同じサイズの車輪が4つ履かされていて、
これを沢山の人で曳いて転がし、巡行する。
車輪は、人の背丈ほどある。
スポーク部分は鉄らしいが、
タイヤに当たる部分は木を円形に加工して黒く塗ったもののようである。

          ★ ★ ★ ★ ★

山は、それ自体が芸術品。
これをレゴに落とし込む。
簡単な話ではない。

次回に続く
posted by KM at 19:18| Comment(0) | 作品解説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月25日

クリブリコンテスト出品作品(7-5)

★ 町家編3 ★

前回の続き。

祇園祭期間中、鉾町周辺の町家では、
虫干しを兼ねて、所蔵の屏風や掛け軸などの美術品が窓越しに一般公開される。
これを屏風祭(びょうぶまつり)と呼ぶ。
下の二枚も、北観音山鉾町の町家のもので、窓越しに撮影したものである。

〈写真@〉
IMG_5447.jpg

〈写真A〉
IMG_5453.jpg
(いずれも筆者撮影)

北観音山の会所は、飽くまで祭りの管理・運営などの拠り所であるため、
屏風祭は行われていないが、
今回、祭りの雰囲気を凝縮するために、
敢えて、この祭りの様子も作品に取り入れた。

          ★ ★ ★ ★ ★

しかし、取り入れると言っても簡単な話ではない。
以下の写真のとおり、
本作は、何と言っても山鉾がメインである。
町家は雰囲気作りの脇役に過ぎないため、規模は極限まで削っている。

〈写真B〉
IMG_5169.jpg

従って、曳山をどかしてしまうと、
建物自体は4幅分しかない。
写真Cを見れば一目瞭然だが、本当に薄い。

〈写真C〉
IMG_5241.jpg

しかも、その中2幅分は壁や柱など建具で占められるため、
自由になる部分は残り2幅分しかない。
普通に組もうとすると、殆ど何も展開出来ない状態である。

そこでどうしたか?

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以下の作品は、2014年11月29日、兵庫県神戸市で開かれた
第2回関西レゴオフに登場した作品である。

〈写真D〉
IMG_4004紙紙作品.jpg
(筆者撮影)

制作者は、ハンドルネーム・紙紙さん。
写真は、すでに展開した状態だが、
折りたたむと、タテ・ヨコ・高さ、およそ6x6x6ポッチの立方体となる。

こうした一連の作品群をFRG_CUBEと呼ぶ。
“FRG”とは、“fragile”
(フラジャイル、英語で〈壊れやすい〉〈脆い〉の意)の略とのこと。
紙紙さんは、この立体の発案者でもある。
本来は、こうした箱型のユニットを持ち寄り、
接続して世界を拡張できるよう考えたそうだが、
その後の展開で、接続無し、単一での完結もよしとなったようだ。

2014年当時、Twitter上では有名だったそうだが、
その頃、私はまだTwitterを始めていなかったため、これを知らなかった。
レゴオフで、これを見たときは、かなり衝撃を受けたことは間違いない。
箱の中から、螺旋階段が出、カウンターが表れ、グラスの看板が下がり、
最終的にはバーになるという実に面白い作品であった。
(FRG_CUBEの詳細はこちら→Twitterより #FRG_CUBE
 バーの最新版は以下のツイート)



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屏風祭の空間は、この作品の考え方をヒントに作った。
畳の間をレギュレーション外に展開しても、
展示の際に規定の範囲にきちんと折り畳み収納できれば問題ないと。
無論、コンテスト期間中は展開出来ないため無駄な機能には違いない。

他の作家はどうしているか判らないが、
こうしたものを作るときの手順は、完成形から逆算していく。
完成形のイメージは、
三和土から上がり框、縁に座布団と空の湯飲み茶碗、畳の間に屏風、装飾に古風な燭台。
つい今し方まで、誰か客人が上がり框に腰掛け、主と話し込んでいたようなイメージだ。

こうしたものをどう詰め込むか、あとは思考による実験に頼った。
畳の位置を決め、屏風の位置を決め、
頭の中で二つに折ったり、倒したり、あれこれしながら今の形に辿り着いた。
もう少しスマートな作り方もあったかもしれないが、これが当時の限界だった。
因みに下の写真は、祭りの様子を展開したときのものである。

〈写真E〉
IMG_5202.jpg

〈写真F〉
IMG_5215.jpg

写真Fの左端、
判りづらいかもしれないが、規定内に収めるため、強引に2幅で山鉾の模型を作った。
これは屏風祭で見つけた以下の模型を参考にした(写真G参照)。
屏風祭を開催する町家では、時折、こうした模型を見かけるため、本作でも取り入れた。

〈写真G〉
IMG_5455.jpg
(筆者撮影)

屏風祭カラクリの展開の様子については、以下の拙作の動画を是非ご覧頂きたい。


(屏風祭カラクリの展開は、8分10秒辺り)

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町家編、最後に二階の片隅。

〈写真H〉
IMG_5223.jpg

隙間があったので、生け花を置いてみた。
祭りというハレの場、京都なら季節の花を生けて客人をもてなすだろうと考えた結果だ。
手持ちの植物パーツをざっと眺めて、
何となく、水盤に黄色いアイリスというイメージが湧き、形にして配置したが、
よくよく考えると、アイリスの開花期は4〜6月で、7月は季節外れだなと気づいた。
詰めの甘さを感じる。
まあ、見立て方次第でどうとでも言えるので
以後、グラジオラスの花(開花期、7〜10月)ということにする。

次回に続く。
posted by KM at 06:47| Comment(0) | 作品解説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月23日

クリブリコンテスト出品作品(7-4)

★ 町家編2 ★

〈写真@〉
IMG_5241.jpg

前回の続き。

祭りの時、会所となる建物には注連縄(しめなわ)が巻かれる。
この注連縄をどう再現するのか、というのはなかなか悩ましい問題であった。

注連縄とは、結界を張り神域を作るための道具である。
注連縄といっても、地域の信仰によって様々な縄の綯い方、飾り方があるが、
一般に、縄に〆の子(しめのこ)という藁を束にし房状にした飾りや、
白い紙を稲妻形に加工した紙垂(しで)と呼ばれる飾りを結んで垂らしたものを指す。

注連縄は、別の当て字で〈七五三縄〉とも書くが、
これは、〆の子の藁束が、順に、三本、五本、七本の組で垂れていることに由来する。
この会所に巻かれているものは、中でもそうした基本的な種類のもののようだ。
細く垂れた藁の房が、軒先で風に揺れている。

スクラップ・アンド・ビルトの結果、私が導き出した答えは次のようなものである。
〈図@〉
注連縄部品.png

タンのランプホルダー(図@左のパーツ)とグリルタイルを
図Aのように波打つように配置すると、
およそそれっぽい感じになる。
一部、白のグリルタイルを挟んでやると、
紙垂と見立てることも出来る。

〈図A〉
七五三縄.png

余談だが、一直線に並べてやると、昭和の居酒屋によく見られた
縄暖簾も出来そうだ。

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ところで、
祇園祭の山鉾のいくつかは、拝観料を支払うことで
屋台に搭乗・拝観することが出来る。
しかし、北観音山の場合、原則そうしたことは出来ない。
拝観は、北観音山鉾町の人間とその関係者にしか認められていないようなので、
必然、内部の写真がネット上に出回る可能性は極めて低い。
事実、私は、内部の詳細な画像を見つけることが出来なかった。
ネット上に見られる画像は、およそ私が撮影したようなものが殆どである。

この建物の二階には、
北観音山の本尊となる楊柳観音(ようりゅうかんのん)像と
韋駄天(いだてん)像がまつられている。

〈写真@〉
IMG_5427.jpg
(筆者撮影)

楊柳観音は、病苦からの救済を司る仏様で、
読んで字の如く、右手に柳の枝を持つ姿で表される。
古来より柳には薬効成分が認められていることから、
薬そのもの、ひいて病気平癒を表すシンボルとなったのだろう。

他方、韋駄天もまた病魔退散を司るものとして祀られている。
一般に韋駄天というと俊足の神様として知られているが、
こちらには小児の病を祓う力があるとされている。

無論これもレゴで作って祀っているが、
こうして説明しない限り、殆ど誰も気がつかない。

〈写真A〉
IMG_5235.jpg

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同じく、二階部分。
道路側に突き出た屋根付きの歩廊は、山鉾に乗り込むためのものである。

〈写真B〉
IMG_5240.jpg

普段は窓や壁で塞がれており、建物の見た目は付近の町家と変わりない。
しかし、祭りの時には、建具がごっそり取り外せるように出来ているようだ。
この時ばかりは、窓と壁の一部を取り払って橋を作る。
実際は、以下のように、歩廊の末端は手摺りの付いた階段になっている。

〈写真C〉
IMG_5423.jpg

〈写真D〉
IMG_5444.jpg

〈写真E〉
IMG_5446.jpg
(いずれも、筆者撮影)

今回はここまで。
次回に続く。

          ★ ★ ★ ★ ★

本日七月二十三日は、丁度、本年の祇園祭後祭宵山。
京都の夏は祇園祭と共に去って行く。
そうした夏の終わりの一幕を、当時、現地で撮影してきました。
初めて実際の映像と自分の作品を組み合わせて映像化した動画です。
よろしければどうぞ。

posted by KM at 12:00| Comment(0) | 作品解説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする